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激震の記憶、忘れさせない 被災者の現状「発信し続ける」 お笑い芸人・村本大輔さん

激震の記憶、忘れさせない 被災者の現状「発信し続ける」 お笑い芸人・村本大輔さん

「笑いに変えてでも発信していきたい」と語るウーマンラッシュアワーの村本大輔さん=8日、熊本市

 

 政治や社会問題を取り込んだ漫才で話題となっているお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔さん(37)=吉本興業=は、熊本地震の被災地を訪れ、自身のSNSやライブなどで被災者の思いや現状を発信し続けている。8日に熊本市で独演会を開いた村本さんは「僕みたいな芸人でも、発信し続けることで誰かに届く」と語る。昨年12月に披露した漫才では、熊本でいまだ4万人近い人が仮設住宅などで暮らしていることに触れ、「(東京五輪で)豪華な競技場建てる前に被災地に家を建てろ!」と言い放った村本さん。沖縄の基地や原発問題などにも切り込んだ内容は大きな話題となった。

 熊本地震と関わるきっかけは、友人でフリージャーナリストの堀潤さんが地震直後から被災地を訪れ、報道で流れない被災者の思いや情報を発信していることに協力したことだ。「僕も熊本の被災者と出会い、思いもつらさも知ってしまった。今では東京などで熊本地震は、ほとんど話題にも上らない。でも、被災地ではみんな『忘れられるのが一番つらい』って言うんです。僕は代弁者気取りの偽善者なんです」益城町などで被災者と交流し、無料ライブも開いてきた。「なぜ被災地でお笑いなんだ」と批判もあるが、「笑ってスカッとした」と涙ながらに喜んでくれる被災者もいた。東日本大震災で家族を失った人の中にも笑いを求める人がいた。「笑いを必要としている人が来てくれたらいい。僕はつらいこと、悲しいこと、理不尽なものを笑い飛ばしたい。世界も社会も変えられないけど、笑い飛ばすことはできる」

 政治や社会問題も臆することなくネタにするため、ツイッターやブログはたびたび炎上する。それでも語ることをやめようとしない。「本音でしゃべらないと伝わらない」と母に教わったからか。「日本ではお笑いで政治や社会問題とかリスクの高い言葉は使おうとしない。でも、米国では普通のこと。僕は人がどう言おうと、自分がやりたいことをやる。無限に来る匿名の人の言葉より、名前を出して声を上げる人の声を聞き、大きな声より小さな声を拾う人間になりたい」

 がんを患いながら、「今日が最後になるかもしれないから」と、全国各地のライブに足を運んでくれる「おっちゃん」がいる。「おっちゃんの口癖は『今日は昨日より幸せになってやる』。僕もそんな思いで毎回ライブをやっている。熊本にも『今日が最後かも』という気持ちを味わった被災者がたくさんいると思う。僕は、つらい思いや悲しい思いはいっぱいした方がいいと思う。学ぶことがたくさんあるし、物事を深く考えるから」

 阪神大震災や東日本大震災が起きた時も他人事だったと語る村本さん。熊本地震後、実際に被災地に来て、被災者の話に耳を傾け続ける中で何かが変わっていったという。「僕は『被災者だから、かわいそう』とは思わない。ただ、彼らが悩んだり、へこんだりしていたら肩を貸したいと思う。話を聞いてもらうことで救われる人がいる。だから僕はもっと聞きたいし、発信したい。でも、実はライブとかで多くの人に話を聞いてもらっている僕が一番救われているのかもしれない」(浪床敬子)(2018年4月15日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

author:kumakoukyouso, category:熊本地震, 18:38
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