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<富山の教諭>部活指導で過労死認定

<富山の教諭>部活指導で過労死認定

7/17(火) 3:00配信

毎日新聞

 ◇時間外 部活動は発症1カ月前79時間、2カ月前100時間
 富山県内の公立中学校に勤務し、2016年夏にくも膜下出血で死亡した40代の男性教諭が今年4月、地方公務員災害補償基金(地公災)富山県支部に過労死認定された。毎日新聞の取材に関係者が明らかにした。地公災が認定した発症直前2カ月の時間外勤務は各120時間前後で、関係者の算定ではうち部活動指導が約7割に達していた。専門家によると、地公災が認定した部活動の時間外勤務としては過去最長規模という。【伊澤拓也】

 関係者によると、教諭は16年7月、自宅で発症。病院に搬送されたものの意識は戻らず、約2週間後に死亡した。遺族側は教諭の勤務状況について同僚の証言などを集め、昨年8月に学校に公務災害認定請求書を提出。同支部は今年4月9日付で「通常と比較して特に過重な職務に従事していた」とし、部活動指導も含めたほとんどの時間外労働を認め、公務災害に当たるとの判断を示した。
 同支部が認定した1カ月の時間外勤務は、発症1カ月前が118時間、発症2カ月前が128時間に達し、厚生労働省が定める過労死ライン(80時間)を大幅に超えていた。算定では、このうち部活動は同1カ月前が79時間、同2カ月前が100時間を占めた。
 教諭は運動部の顧問で、土日もほとんど練習か練習試合があり、発症直前2カ月の土日の休みは計2日しかなかった。関係者によると教諭は仕事にやりがいを感じていた一方、「休みたい」と心身の負担を訴えることもあったという。この中学校を所管する市町村教育委員会は「コメントすることはない」と取材を拒否している。
 教員の過労死問題に詳しい松丸正弁護士は「時間外勤務の部活動がこれほど長時間認定されたケースは極めて珍しい。運動部活動の多くは勤務時間外の『不払い残業』で、早急な是正が必要だ」と指摘している。

 ◇地方公務員災害補償基金
 地方公務員災害補償法に基づき、公務中や通勤途中に災害に遭った地方公務員と遺族に対し、損害を補償する地方共同法人。都道府県と市区町村からの負担金で賄われる。公務災害の認定請求があった場合、都道府県と政令市にある支部が審査し、認定されれば療養・休業・遺族補償金などが支給される。不服がある場合は支部か本部審査会に審査を請求でき、行政訴訟を起こすこともできる。

 ◇部活動指導の長時間化、抜本的な見直しを
 部活動の指導が長時間化する背景には、1972年に施行された教職員給与特別措置法(給特法)がある。
 給特法は管理職が教員に命じられる時間外勤務を修学旅行や災害時などの4項目だけに限定する。一方で教員は自発性や創造性が求められる特殊な仕事だとして、基本給の4%を「教職調整額」として給料に上乗せし、時間外勤務手当は支給しないことを明記する。4項目に部活動は含まれず、どれだけ指導しても給料は変わらないため、教員や管理職は時間を把握する意識が薄れる。
 部活動は学習指導要領で教育課程(カリキュラム)外の「生徒の自主的・自発的な活動」に位置づけられるが、校務の一つとして半ば強制的に指導に従事しているのが実情だ。「上達したい」という生徒の気持ちや保護者の意向を受け、短時間で切り上げられない教員は少なくない。
 スポーツ庁は3月、「1週間に2日以上の休養日を設ける」「1日の活動時間は平日2時間、休日3時間」などとするガイドラインを示した。ただし、あくまで目安に過ぎず、どこまで実効性があるかは不透明だ。
 給特法施行から半世紀近くが過ぎ、教育現場の状況は変化している。時間外の部活動を無制限の「ただ働き」としないよう、給特法の廃止も含めた抜本的な見直しが急務だろう。【伊澤拓也】

author:kumakoukyouso, category:教職員の働き方改革, 06:41
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